「万能鑑定士Qの推理劇 II」
今回の鑑定品は古本。
お店を大事にする莉子がまさかの閉店、オークショニアとして転職するのはまさかの展開でした。
まぁ、健気な男の子を救うための行動なのですから、莉子らしいと言えば莉子らしい。
今回は犯行が少しまわりくど過ぎるような気がして、あまり楽しくはなかったかな。
子供への虐待が疑われるなら、もっと素早く行動してほしいし。
珍しくもスカッとしないセンチメンタルな終わり方なので、微妙な評価となります。
毎度毎度気持ちよく終わりすぎるのも変化がないですし、こういうエンターテイメント性を追求する物語は結末をどう変化させていくか難しいところですね。
別シリーズの主人公が出てくるのはずっと続くのでしょうか?
相方の小笠原や過去作品の関係者を出す方が好きなんだけどなぁ。
今回は、邪魔の上司をバルコニーに締め出すシーンは最高にスカッとしました。
いいなぁ、こういう上司。
「美しい日本のくせ字」
え?汚くて読み辛い?
いいえ、あなたのくせ字が大好きなんです!
小学生の時に宿題係でした。
係の仕事は、今日の宿題をみんなが提出しているかどうかチェックすること。
小学生だから、名前を書き忘れている子の多いこと多いこと。
おかげさまで、名無しの宿題の犯人探しのためにクラス全員の字が判別できました。
この丸文字はあの子、この豪快にはみ出すのはアイツ、このやたら細長いのは意外にもあの子と。
なるほど、みんな同じ日本語を書いているのに、書き方でこんなに千差万別なんだ。
もう字だけで誰のか分かっちゃうねーって、もうひとりの係の子とぺちゃぺちゃ喋りながら見極める作業をしていたのを今でも思い出せます。
字で人となりを感じることができる、そのことに気付いて以来、私は美しい字よりくせ字がどうも好きでたまらない。
もちろん、達筆な字が嫌いな訳ではありません。
ご朱印を集めるようになってから、寺社で頂く達筆な字の虜でもある。
誰が書いたかわかりづらい、没個性的な教科書的な字は好きではないのです。
しかし、世間的にはくせ字は悪。
私としては理解しがたいことに、なんと世間の皆様は悪筆よりのくせ字の解読技術が意外と低い。
私自身が悪筆なので、だいたいどんな字も普通に読めるのですが、どうやらほとんどのあの悪筆は解読されないようです。
そして、読めなけりゃ貶されるのもやむなし、それが世間一般の常識なわけです。
というわけで、長年こんなこと考えているのは自分だけだろうと思っていたわけですが、どんな道でも先人はいるらしい。
この本に出会えました。
芸能人、職業人、名も知りえぬ市井の人、実に幅広いくせ字が大集合。
ただくせ字を集めただけじゃないのが、この本の素晴らしいところ。
くせ字好きの筆者による絶妙な解説や妄想、推測に加えて、中国や日本の偉人なる書家たちの字もくせ字の比較にしてしまう大胆さ。
そして、日本の女子たちの丸文字、へた字の変遷まで、しっかり分析、豊富なサンプルとともに明らかにされている。
そう、個性だけじゃない。
字は時代も反映しているのです。
と、感心したところで、とある一般人と中国の石碑に残った字体がそっくりであったり。
なるほど、時代が変わっても似たような字を書く人っているものなんだぁ、と色々感心します。
特に目から鱗だったのは、外国人の書いた日本語。
田舎だとあまり外国人の手書き文字って見ないのですが、なるほどカレー屋の看板は確かに外国人率高いかも。
しかし、ある広告の文字を見ただけで「これは日本人が書いたものじゃない。これを日本人が書いたとすると、その人の人生が気になる」とまで断言できるのは、くせ字愛好家としての能力面高すぎて、感服致しました。
この本の魅力を筆者による独特の感性により、更に高め、そして支持されているのが、発行から数ヵ月で重版されている事実に裏打ちされているのではないでしょうか。
さて、今年も年賀状の季節です。
旧知の友の筆跡を楽しむ時期が訪れました。
いつも印刷だけで済ませている方も多いと思います。
誤字脱字上等。キレイじゃないくせ字でOK。
たった一言でも構いません、どうぞあなたの文字を見させてください。
その文字を見るだけで、あなたと過ごした時間に戻ることができます。
最近は手書きで書く機会も減りました。
忙しい師走にこそ手にして欲しい一冊です。
「日本SF短篇50 III: 日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー」
Ⅴ→Ⅰへ、逆から読んでます。中間点に到達。
日本SF短篇50 III: 日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 日本SF作家クラブ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/06/06
- メディア: 文庫
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一部の例外を除いて、なかなか読みごたえがある作品が多かったです。
以下ネタバレ。
続きを読む「万能鑑定士の事件簿ⅩⅡ」
事件簿シリーズ最終巻、この表紙に驚いた読者多数。
万能鑑定士Qの事件簿 XII 「万能鑑定士Q」シリーズ (角川文庫)
- 作者: 松岡圭祐
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/09/01
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太陽の塔を鑑定するとはさすがにでかすぎじゃないだろうか?と思ったら、事件の真相はしょうもないのに、スケールはでかくて、三回驚かされる一作。
表紙にも驚かされるので、4回の驚きでしょうか。
莉子も好きなんだけど、雨森華蓮はもっと好き!な人は、作品の出来に関わらず楽しめたと思います。
もう二人で事務所してほしいぐらい莉子&華蓮ペア好きなんですけど、華蓮の能力は鑑定業なんかにはもったいないですね。
素直に改心しつつあるようですし、今後の活躍に期待。
「万能鑑定士Qの推理劇Ⅰ」
シリーズ変わって、事件簿から推理劇へ。
- 作者: 松岡圭祐
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/12/22
- メディア: 文庫
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事件が起きて、いろんなものを鑑定して鑑定して…な流れは変わらないので、シリーズ名をなぜ変えたのか。
作者の意図がちょっとわからない。
「推理」と名付けられると、人が死にそうな雰囲気漂いますけど、相変わらず誰も死なないぬるま湯さ。
「…人は同じ道の上で優劣を競ってなどいません。それぞれの道を行くだけです」
て、莉子がいいこと言った後に。
宇城がいった。「僕は愛美を信じるよ。全力でぶつかればいい。その後のことなんか心配するな。あらゆる手をつくしてきみの働き口を用意する」
愛美は胸がいっぱいになった。「宇城さん……」
この流れは爆笑。
ただのバカ御曹司かと思った宇城が普通にいい子でびっくり。
裏切り要員かと思ったのに。
また僕が養うよじゃなくて、働き口を用意するよてのが、なかなか御曹司じゃないか!
序盤の入稿データの騒動と宝石鑑定がどう繋がるのか?と思ってましたが、なるほどという展開。
ただ、アンケート内容が入れ替わってるのに、集計段階で気付かないことがあるのか疑問。
また、最後の小笠原下げて、上げた展開が、ちょっとくどくて頂けない。
普通に二人で仲良く花火楽しむだけじゃだめだったのかなぁ。
さすがにシリーズ13作ともなると、飽きがくるのかもしれないので、数ヶ月あけて次巻に手を出そうと思います。