読書はしご

読書雑多文。

「旧怪談(ふるいかいだん)」 京極夏彦

旧(ふるい)怪談―耳袋より (幽ブックス)

旧(ふるい)怪談―耳袋より (幽ブックス)

表紙から小野不由美の「鬼談百景」のような雰囲気を感じて怖がるために図書館で借りたのに、怖いような怖くないような、つくづく不思議な一冊。

江戸時代、根岸という旗本が怪異なお話を集めたという「耳嚢(耳袋)」。

以下wiki

耳嚢(みみぶくろ)は、江戸時代中期から後期にかけての旗本・南町奉行の根岸鎮衛が、天明から文化にかけて30余年間に書きついだ随筆。同僚や古老から聞き取った珍談、奇談などが記録され、全10巻1000編に及ぶ。耳袋と表記もされる。

ホラー好きなら誰でも知ってる有名作品ですね。
確か……中学生2・3年のときかな、「新耳袋」が流行って同級生が回し読みしてた。
こっちは現代版の怪談話を集めたものですが。
耳袋は読んだことなかったので、面白く読めました。

本作品は耳嚢の一部を現代風に読みやすくしたもの。
分かりやすいのは分かりやすいけど、登場人物がUちゃんやらOさんだったり、寄合をミーティングと表現したり、時代物好きとしては違和感が残る表現に少し興醒め。
どちらかというと、現代版の後にある原文?のほうが、雰囲気があって面白い。
ただ、原文ばかりだと、読み解くのに根性いりそうだし、やはり読みやすいのは助かります。

同著者の同じような試みとして、下記2作があるけど、こういった温故知新がブームなんですかねぇ。

遠野物語remix

遠野物語remix


この狂気うずまく2作と比べると、旧怪談のほうは「うわ……怖い」というより、「うーん、不思議だなぁ。やぁ、世の中には真相は分からないけど色んなことがあるね。しかし」とのんびりした雰囲気。

個人的に好きなのは、「頭痛の神の事」。
最高にほんわかしてる。
ある所に頭痛持ちがいて、絶不調で倒れ込む。男を見かねた友人が「えぇ神社あるんだよ、代わりに行ったるわ」と柏原明神という神社に代参。家で臥せる男の夢の中で神使のお猿さんが頭を揉み解して、頭痛解消。
「全く信じてないけど、なんか頭痛消えたわー。でも…偶然じゃない?え、猿祀られてる神社なの。びっくりだわー、へー」と友人とともにびっくりする話。

他の話も猫憑きに、怨霊、幽霊と色々出てくるけど、「こういう話があってね」という伝え聞きを集めたものであって、もちろん怖いものもあるけど怖がらせるためのお話ではない。
まさに耳嚢。
今度は久しぶりに新耳袋でも読もうかなぁ。
こっちはおそらく怖い。