読書はしご

読書雑多文。

「君と過ごす季節春から夏へ、12の季節」

 
立春から大暑まで、カレンダーでいうと2月4日頃~7月23日。
24節毎にひとりの作家、ひとつの物語。
季節の小話といったところ。
本とか、和菓子とか、テーマにそった短編は多いけど、24節季でそれぞれの別の季節の短編集とは珍しや。
 
まぁ、でも全体的にはただの短編集。
作家の渾身の一作が目白押しってわけでもなく、普通に面白いのもあれば普通かなーって作品もあり。
ただし、ただ一篇は除く!
読むべき作品、あり。
 
それが西加奈子の「立夏」。
リース会社に勤める道草のなんとない日常なんですが、これが絶妙に面白い!
取引先から催促の電話があったり、キツい職場だから新人が仕事が嫌で出てこなかったり、同僚のために付き合い残業したり。
夜道で酔っぱらいすぎた女性を介抱したり…は、あんまりないか。
頼りにならない上司や同僚、サラリーマンあるあるな状況。
 
でも、リチャード・ギア似の心優しい道草氏にかかれば、五月病は緑を愛でる風雅な病となり、取引先からの苛ついた電話も「お前がようしてくれとるのは知っとる!いつもありがとう!」と感謝の言葉で締めくくられ、不審者扱いしてくる酔っぱらいの女性には「なんやこの…まれに見るいい人!」と惚れられる心暖まる情景に。
 
もう読了後の心の和み具合が半端ない。
 
どっちかというと女性作家が多いし、女性向けぽい本の構成なんですが、日々疲れてやさぐれそうなサラリーマンにこの作品だけ読んで欲しい。
 
西加奈子の他の作品もちょっと読まなきゃなと思わせる爆笑できる作品でした。
テヘラン生まれで、エジプト・大阪育ちって、この人絶対面白いわ。
 
 
図書館で以下の文を読み、「この本、借りよう!」と即決しました。
…夏を迎える準備を始めた若葉や、遅ればせながら芽吹き始めた木々を愛でている際、うっかり時が過ぎるのを忘れてしまうことがあり、これが世に言う五月病か、なんと風流な、と思った次第である。
道草は、五月が好きだ。