「ファンタズマゴーリア」
三つの世界を少年(少女)がめぐる物語。
少年と少女、ではなく。
少年(少女)であり、少女(少年)である。
マルタであり、マルテ。
旧世代のマルテのあとに生まれた記憶のない少年マルタ。
複雑。
本人も自分がなにかわかっているようで、わかっていない。
しかも、マルテが死んだと思ってたのに、話が進むにつれてマルタからマルテに性転換。
そもそも、舞台となる世界もよくわからない。
少年(少女)が属するミラーワールド。
人間が暮らす人間世界。
そして地中人間が住む地中世界。
このファンタジーの素晴らしいところは、地中世界の表現だと思う。
地上で人間が大気を気にせず振る舞えるように、地中世界の人間は大地を気にせず生活できる。
地中なので青空はないが、うっすらと太陽を感じられるやさしい土の色の空。
地底世界ではなくて、あくまで地中世界。
でも、食べ物は地中に埋めてると自己増殖するハモナのみ。
なんだハモナて。指輪物語のレンバス並みに食べてみたいぞ。
ボーイミーツガール。戦闘。もしかしたら恋、そして別れ。食欲。いろいろある。
一体、なにに巻き込まれているのかわからない。
物語の終盤になってもわからない。
でもそういうのもいいのかも。
何から何までわかってしまうってのもつまらないものなのかも。
読んでるうちにそう思う。綾辻行人の深泥丘奇談みたいだ。
人を選ぶ本であるのは間違いないし、大衆に支持される本でもない。
でも、この続き、もしくは作者の他の作品を読んでみたくなった。
実にファンタジー。
こういう自由な発想で描かれた作品には大衆的なライトノベルにはない魅力が溢れている。