読書はしご

読書雑多文。

「君と過ごす季節 秋から冬へ、12の暦物語」

 

 読みきるのが大変苦しかった。

アンソロジー形式でなければ、最初の三作目で本を伏せるところでした。

残念ながら、全体的に「君と素敵を過ごしていない」作品が多く、出版社と作家がどういうコンセプトで短編集を作っているかわかっていないのでは?と疑問に感じる出来映えです。

「君と過ごす季節」って、聞いて出てきた作品がこれですか?

そもそも、ほとんどの作品が君と過ごしていない。

なんかいらいら疲れてる女性多過ぎ。

例えば、バブル女と現代っ子が邂逅する柚木麻子の「白露」。

面白いけど、君と出会っただけで、過ごしてはいない。

 

春夏編に比べて、希望のないかさついた短編が多くて、読み進めるのに気力が必要だった。

後半はちょっと持ち直したけど、人に勧めたりはできないなぁ。

個人的には秋冬のほうが季節として好きな分、素敵な作品がなくて残念でした。

作家さんが季節感があまりわかっていないんじゃないかと心配になります。

 

途中まで、最高に面白かったのが、平松洋子の「処暑」。

丸い氷玉を完璧につくるはつ江さん、その氷玉でお酒をのめばびっくりふしぎ体験!とファンタジー感がたまらない一作。

なのに、ラストがもんげー気持ち悪い。

子供のころ遭遇した変質者にを思い出して最悪。

はつ江さんも幸せにしておくれよ!

 

言葉選びが素敵だったのは、小川糸の「霜降」。

香川弁を「柔らかな波の上に乗っているようなイメージ」というのは瀬戸内感があって好き。

見上げると、空には雲ひとつない。手を伸ばして指で触れたら、はっきりと指紋が残りそうな青空だ。

秋空に指紋残したい、早く秋来い!

 

最後の穂高明の「小寒」は年末年始と書きやすいお題だからか、作家さんがいいのか、珍しく安定して読めた。

この作品みたいに、それぞれの季節の輝きを短編にしてほしかったです。