「最後の証人」
タイトルが胸に響く一作。
私としては宮部みゆきレベル。
この社会性の高さと、日常を営む人たちを襲う悲劇と、事件へのひたむきさ。
いやミス読むぐらいなら、柚月裕子読んだほうがいい。
(注:個人の感想です)
裁判と事件が並行して進み、少しずつ事件が明らかになっていきますが、この構成がうまい!の一言。
たくみな叙述と確かな感性に支えられた一作です。
途中もなかなか危ないのですが、最後の証人が現れてからの流れは、涙腺が大変なことになります。
ネタばれです。252頁からの最後の証人の吐露は忘れられないシーンとなりそう。
「なぜ、今になって話すつもりになったのですか」
…略…
「彼は、誰でも過ちは犯す。しかし、一度ならば過ちだが、二度は違う。二度目に犯した過ちはその人間の生き方だ、と言いました。…」
「彼を玄関から追い出し鍵をかけると、寝室に駆け込み頭から布団をかぶりました。しかし、私の頭の中からは、彼が言った言葉がずっと離れませんでした。二度目に過ちを犯したら、それがその人間の生き方になる。私は単なる犯罪者だ、という言葉が」
…
「私にはふたり子供がいます。…犯人を逮捕して帰った日には、からなず子供に話していたことがあります。それは、彼が昨日、私に言ったことと同じものでした。誰にも間違いはある。大切なのはその後だ。二度と間違いを繰り返さないことがもっとも大事なんだ、と」
この後に続く言葉が、また感動です。社会人として、人間として心に刻みたい場面。
そして、299頁。
「罪はまっとうに裁かれるべきだ、と言っています。でもそれは、まっとうに救われるべきだ、ということでもあると思います」。
マスコミもtwitterも裁くことにばかり注力しているのかもしれない昨今。
本当は、誰かを救うことこそに苦心すべきではないでしょうか。