読書はしご

読書雑多文。

「素浪人横丁 人情時代小説傑作選」

 あてどない暮らしの中で、人情を感じたいときに。

 

 

池波正太郎「雨上げる」

相手の興を削ぐ強さと態度、ちょっと実写化で見てみたい。

浪人の旦那のほうが主人公かと思いきや、妻が主人公に切り替わる。

「その日暮らしの人のほうが、存外温かい」と先の知れぬ貧乏暮らしを思いきれる妻の強さに惚れ惚れとする。

解説によると映画があるらしいので、ぜひ観たい。

 

山本周吾郎「異聞浪人記」

なぜか井伊家の家臣達がTwitter民のよう。

バカにした切腹侍の背景がただ哀しい。

だけど、自業自得のような気もして、浪人を巡る世間の厳しさが感じられる一作。

 

滝口康彦「夫婦浪人」

興味本位な主人公と衆道浪人カップル。

主人公、けっこう下種やなぁと読んで、序盤引いてたんですが、中盤からどんどん面白くなってきて、心底驚かされました。

終盤の仇討ちからは、どんどん話に引き込まれて、最後の生き様は見事の一言で、この一作で唯一涙した作品となりました。

一番、武士らしかった。

 

 

峰隆一郎「八ヶ辻」

これは上と違って、完全に自業自得でしたね。

死の病に罹って女房に逃げられ果てには孤独死か…と同情したのに、なんと全然働いていないヒモ状態でしたという告白が始まる。

更に、女房に逃げられた悔しさで、動けもしなかったのにどんどん回復してきて、逃げた女房を突き止める。

読めば読むほど同情心が薄れていくという珍しい作品。

普通は事情が明らかになるにつれて、主人公に同情するものなんですけど?と読者の心を離していくある意味で意欲的な作品。

 

山手樹一郎「浪人まつり」

年の瀬に読みたい一作。

年の瀬の金策に追われる浪人と町人の出会い。

自分がどうなっても世話になった長屋に餅を届ける温かさと、京へ逃避行する二人を包む躍動感に包まれる作品。

 

 久しぶりに時代小説を読むと、結構意味を忘れてしまっていた単語があって、調べないとわからない単語の量に我ながら驚いた。

作品発表から時代が相当経っているものもあり、そもそも時代小説だからと言い訳が立つにしても、こんなにも分からないのか。

そして、昨今ではお目にかかれない言葉の多さに愕然とした。

日本語力を鍛えるためにも、時代小説をもっと読まないとなあ。