読書はしご

読書雑多文。

「12星座小説集」

「 星座をキーワードにアンソロジーかぁ。面白そう」って思って手に取った人を後悔させるには十分すぎるほど、良い作品がない。

星と消えそうな本を出版した講談社はなかなか勇気がある。

 駄作ばかり!と言っては過言でないものの、一番初めに収録された「安政元年の牡羊座」だけは非常に面白かった。

軽快な語り口と江戸時代の武士と星座という組み合わせがなかなか良い上に、しっかり星座のイメージを踏まえた上で物語が作られており、大変面白かった。

 

この最初の一作の出来栄えが良すぎて、後の作品が霞んでしまったような気がする。

星も一等星もあればそうでないものもある。作品もまた然り。

 

敢えてもう一作取り上げるとすれば、佐伯一麦の「二十六夜待ち」。

「二十六夜待ち」とは江戸時代の風習で、陰暦正月・7月の26日夜半の月光の中に弥陀、観音、勢至の三尊が現れるとした月見の風習、その雰囲気を感じる自分の名前も過去も知らない男が主人公の情緒的な一作。