「坂本司リクエスト! 和菓子のアンソロジー」
一度図書館で借りたのに全く読めず、数年経ってまた借り直した本。
お題系アンソロジーとはかくあるべし!といっても良いほど、良作しかない一冊。
もちろん読了後には和菓子を頂きたくなるため、深夜に読むのはお勧めしない。
「空の春告鳥」坂本司
まずはアンソロジー企画者から。
休みが友達と合わないので休日はだらだらーとする冒頭の主人公に親近感。
和菓子屋に勤める主人公がデパートで耳にした「飴細工の鳥」って何だろうって推察するストーリー。
同僚の男の子がまさにスイーツ男子でいい味出してました。
「トマどら」 日明 恩
タイトルからはちょっと想像できない重い話題。
兄弟姉妹で親の愛情に差を感じることってありますよね。
この小説のお菓子が一番食べたい。飴にくるまれた果物のどら焼き…素敵。
「チチとクズの国」牧野 修
魂は餡で。三途の川の水は葛。
「(略)死ぬと人間は水まんじゅうになるんだよ」
「アメリカとかじゃあどうなるんだよ」
「……まあおそらくプリンの中に――」
「ありえねぇ!」
「迷宮の松露」近藤 史恵
悩めるOLはモロッコで彷徨う。はじめてモロッコに行きたくなった。
松の実とかがごっそり入ったお菓子、大好きだなぁ。
「融雪」 柴田よしき
男と女の再開話。主人公の立ち位置が微妙で、話としてまとまった感じがしない。
なにかのシリーズの短編かなって出来。
「糖質な彼女」 木地 画映子
ボーイミーツガール@病院。
「時じくの実の宮古へ」小川 一水
面白い。亜熱帯化した日本での和菓子作りの旅。
宮古?都?って途中まで混乱したけど、なかなか冒険な話でわくわくしました。
これって少年漫画仕立てにして、読み直してみたい。
「古入道きたりて」恒川 光太郎
戦争を間に挟んで、受け継がれる古入道。
途中まで、おばあさんが鬼婆に変わって食われるんだ…と予想していたら、そんなことはなかった。
「しりとり」 北村 薫
お菓子よりもエピソードの甘さに、あまーい!て叫びたくなりました。
いいお話。当の本人が既に他界している寂しさ。
「甘き織姫」 畠中 恵
ぶっ飛んだキャラと推理もの。
この人は江戸時代以外を描くと、なぜか作品の質が落ちるなぁ。
数年会わなかったら友達ではない、って台詞を聞くと、この作者とは友達にはなれそうにないなぁと。
10年会ってなくても友達は友達じゃなかろうか。
ちょっとぶっとんでるけど悪人ではない大学生の知人を「え、俺たち友達?」って何回もいう主人公勢がどうも好きになれず。