読書はしご

読書雑多文。

「記憶の食卓」

「夜は一緒に散歩しよ」と同じく、ホラーが読みたくて借りました。
ホラーはホラーでもサイコホラー。
ちょっと気持ち悪い描写が多いので、「悪魔の舌」同様おすすめしにくい作品です。

記憶の食卓

記憶の食卓

名簿屋に働く主人公がふと手に取った名簿。
載っているのは、最近世間を騒がす連続殺人事件の被害者たち。
その名簿に自分の顔写真・名前・住所が載っていた。

連続殺人の被害者リストに自分が載っているというアイデアが面白い。
サブストーリーも結構面白い。
心理的外傷を抱えた人々が、どう克服しようとするのか。
そして極限状態でなにに執着するのか。
ある者は感想を、ある者は記憶を。

面白いんだけど、気持ち悪い描写にしてやろうという作者の意図が強すぎて、なんだかなぁ。

ラストの研究者のサラリーマン的な無責任な態度がまた物語の質を下げてる。
ここは寧ろ、研究者も被害者の家族の一人で、被害者たちを助けたかったのにすんでのところで間に合わなかったという後悔と懺悔を聞きながら、処置をされた方が。
救いの可能性があったけど繋がらず、また記憶に対する考えの違いに絶望して。
そして善人だった研究者もまた他の被害者に惨殺される。
また他の研究に荷担していない研究者が惨殺した被害者を殺さざるを得ない、みたいな業の深さを感じながら終わった方が良かったかな。
そして更に、全然間に合わなかった警察がのこのこ現れて、最後の研究者に全てを聞き、自殺を止められない。

で、ラストに精神障害で有罪にできなかった包帯の男が聖書の一説を口ずさみながら、人里離れた道を行く。