「メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション」
短編集「本をめぐる物語 一冊の扉」に収録されていた「メアリー・スーを殺して」が非常に面白かったので、同タイトルが本になっていた本書も手に取ってみました。
この本の謎に全然気付かなかった。悔しい。
読書メーターで赤っ恥かいた気がする。
以下ネタバレ。
この本の謎、というのが4人の作者によるアンソロジーかと思ったら、ぜんぶ名前を変えた乙一氏だってことですね。
確かに「本をめぐる物語」のメアリー・スーの作者は乙一氏だったのに、本書では中田永一となっていて「あれ?そうだっけ?」とは思ったんですけど。
細かいところに気付くのが名探偵だっていうのに、私は所詮凡人です。
「山羊座の友人」
ジャンプ電子版で漫画化されてます。
漫画の絵柄と雰囲気大好きだったので、原作はぜひ読みたい思ってたんですよね。
原作では携帯の入力方式をめぐる会話が少しくどくて、嘘くさく感じました。
ただ、呼び出されたのが誰か、分かっていて、すべて承知で罪を被る、という少年が痛ましいのはこちらかな。後日談も載っていて、後味悪いですが良書です。
よくいじめの被害者も悪いとかいいますけど、する側と周りが許容するのが一番悪いんです。
「愛すべき猿の日記」
短いが勢いがあって良い。
大麻に手を出しててるジャンキー大学生で、こいつどうしようもないわ…って思ってたのに、まさかの文字を書く欲求から始まる成功譚。
文字書くのはだいぶ先ですけど。
「メアリー・スーを殺して」
既読なんでスルー。
「宗像くんと万年筆事件」
小学生の空気がうまい。
宗像くん、いい子なので幸せになってほしい。
普通は風呂もごはんも不十分な生活ならぐれてもいいのに、本当にいい子だ。
同窓会でよく話題にするなら呼んでやれよと思うけど、さすがに夜逃げだと連絡つかないのかもなぁ。
日和見主義な先生には最高にいらいらします。
でも、中学高校の先生で日和見主義の先生はいたけど、小学生ではいなかったな。
小学生で日和見主義者な先生に担当されると、生徒も未熟な分辛そうだと感じました。
以下3作は、良作ではないけど読めなくもない。
「トランシーバー」
東日本大震災。本当にこういう方が多いんだろうなとぐっと涙が出そうになる。
どんな災害でも家族を失うのは辛いけど、遺体が見当たらない辛さは本作のとおりなんだろうなぁ。
津波の悲劇は地域で語り継がれるものなんだろうなと改めて感じました。
「ある印刷物の行方」
3Dプリンター×ES細胞。
昨今話題の、そしてこれからの生命倫理の主要テーマではありますが、少し題材を持て余した感があります。
科学と生命倫理の葛藤をもっと描くために、研究員の想いがもう少しほしかった。
まぁ…人間でなくても、すでに動物実験で酷いことしてるんですけどね。
突き詰めるとベジタリアンになりそうな話題です。
乙一氏でも、書けるからと思いつきで手を出しちゃいけない領分ではないでしょうか。
ホラーというか中途半端です。現実も発展途上なので、仕方ない側面もあります。
「エヴァ・マリー・クロス」
ハヤカワミステリの短編かと思いました。
海外っぽい発想な人間楽器。
気持ち悪くて面白いけど、救いのなさも摩訶不思議さも一風違ってます。
就寝前に読んだので夢見最悪でした。
少なくとも寝る前に読む内容ではないし、気分爽快になる青春系の本を読後におすすめします。
乙一ファンは全作を、そうでもない方は「トランシーバー」まで読めばいいです。