「たまさか人形堂物語」
ハードカバーのデータがAmazonにないですね。
この表紙なら借りなかっただろうなぁ。
ハードカバーの装丁はうぐいす地の背景にさまざまな人形のイラストが描かれているかわいらしいものでした。
漫画のようにイラスト絵が小説の表紙になることが多い昨今ですが、あまり好きじゃない流れです。
どんな容姿か想像するのも楽しみだと思うので。
装丁からほっこり系かと思いきや、ぬいぐるみバラバラに始まり、ラヴドール、毒殺、狂気に贋作、離散と物騒なテーマが並んでました。
登場人物がいい味出てて、30代の女性店主・澪、素性の知れない玄人人形師・師村さん、傍若無人天真爛漫な凄腕人形師・冨永くん。この3人が他人ながらも家族のように人形堂を切り盛りしていって安心します。
話を経る毎に少しずつ明らかになる従業員の背景と想い、どんどん読めました。
ちょいちょい出てくる「人形ってなに?」という問いには考えさせられました。
どこからが人形、どこから模型、どこからロボットなのか。
動物なのに、テディベアやミッキーの人形という言葉のおかしさ。
日本と海外では捉え方が違うとしつつ、作中で冨永くんがアトムで例えるのは面白かったです。
作者が少女小説家出身なためか、最後はアラサー向けコバルト文庫な雰囲気。
素人で特に人形方面で取り柄のない主人公ってのが、いかにも少女向けっぽい。
ただ、ラヴドール製作会社の束前氏に「創作人形を作らせる気にさせた」という言葉を汲み取ると、人形師をその気にさせる才能があるのかな?
またその束前さんが逃げ出した澪を追いかけてからの流れは完全にコバルト文庫。
にやにやしちゃいました。
あと30越えには冨永くんの辛辣な言葉が澪同様突き刺さりました。