「バージンパンケーキ国分寺」
アンソロジーで見かけた雪舟えまさん。
せっしゅう、じゃなくてゆきふねと読むのかと、図書館の書棚で岡山県民はびっくりしました。
アンソロジーで読んだ時も感じましたが、この人の世界観と設定、登場人物は不思議な魅力があります。
更にこの本のパンケーキの魅力たるや。
ブルーグレーの雨雲のようなソーダ・ゼリー・パンケーキ。
わんこそば方式で食べおわるころに、追加されるわんこパンケーキ。
食べる人の想いが地層のように重なる半球形のパンケーキ、プライベート・プラネット。
次の休日は絶対パンケーキ作らなくては。
ストーリーは男友達と女友達が付き合って、なんか気まずい女子高生みほをめぐる、ハイハイ青春にありがちな悩みですね。
主人公の自由な発想によって解決したんだかしてないんだか、微妙な終わりかた。
ゆるゆるな恋愛より、どきどきできる相手と巡り会えたほうが、なんかこの子のためのような気がします。
この子の話より、摩訶不思議パンケーキ屋の店主と常連の占い師の話がすごく素敵で切なくて、主人公の物語が霞んでしまった。
主人公は現状のままだけど、店主と占い師さんは、新しい世界に旅立っていて、魔女の宅急便みたいなわくわく感があるのに、なぜ主人公のみほは旅立たないのだろう。
アンバランス。
店主さんは、今から想像もつかないご職業で。
純粋培養にアプローチかける男性大変だったろうな、と思いながら、お菓子を振る舞うだけでもう甘酸っぱさで死ぬかと思いました。
「私たちって不良ね」ってかわいすぎです、シスター!
しかも日付間違うとかね。
スマホ時代にはなさそうなミステイクの切なさといったら。
日付を確かめるものといえば、今日の新聞、テレビ、カレンダーぐらいでしたね、昔は。
あと、書道家のわるつ先生がかっこいい。「影を認めない人間の成長はそこで止まる」とか含蓄のある言葉が多くて、素敵でした。
お母さんもお父さんも、なんか幸せそうに死んでしまって、ひとりぼっちになった陽炎子(かげろうこ)。
怖くて厳しい書道家の先生と一緒に暮らして、先生は実は魔女で、生きる力を教わっていく。
この話だけで一冊本書けますよ!という魅力に溢れまくってます。
最期を看取り、「ありがとうございました」って感謝するシーンは、感動しすぎてちょっと涙が止まりませんでした。
物語の完成度はそんなに高くないと思うのに、なんか不思議な魅力がある作家さん。
早く他の作品を読んでみたいです。
あ、あと寝違えて街から人がいなくなったと騒いでた写真家さん。
きっと世界の狭間に迷い混んだか、死者になりかけてたのだと思います。
不思議すぎる設定や曖昧模糊なところが多々あるので、矛盾とかに手厳しい人は読むといらいらするとか思います。