「大人が魂消る 日本の古典 怪談・珍談奇聞」
江戸時代に編纂された「耳袋」や「甲子夜話」等から珍談奇聞のなかから、大人が楽しめる82篇を厳選したもの。
大人は、男女の間が一筋縄ではいかず、たがいの愛が深くなるほど、きれいごとではすまなくなることを知っている。人生が皮肉と変転に満ちたものであることを、不如意と不如意が鎖のようにつながる苦いものであることを、いやというほど知っている。
(略)
本書の82篇は、子供に読ませるには味が辛すぎる、渋すぎる。もったいない、とも言える。
恐ろしいもの、不可思議なもの、珍奇なもの、どの話もとても怪異なエッセンスがたっぷりで楽しめました。
江戸だけでなく日本各地の怪異話なので、第三章にあった「山姫の恵み」は地元岡山備前の話が出ていて、「あの備前の山中でも遠野物語のような山で怪しき女に遭遇する話が昔あったのか」と楽しめました。
あと、第一章の「妻の夢に出くわした夫」は離れて暮らす夫婦の苦しみと思いやりが溢れてて、良い話でした。
夫は妻の浮気を疑ったり、妻の寂しさを知ったり、妻は知らずに亡くなってしまったのかと嘆いたり、最後は安心したりして、たった
一晩でこころの動きが目まぐるしく変わり、特に悪いことしたわけでもないのに、なにか可哀想な気もします。
やはり日本の夏は怪しきものを楽しみたいですね。