「かわいい絵巻」
絵巻って、昔の人の漫画みたいなものなんだろうなぁと思います。
「かわいい……」シリーズの一冊。
読み応えがありすぎた「かわいい妖怪画」を読んだ後に本書を読むと、比較的軽いガイダンスのように感じますが、実にさまざまな絵巻物が紹介されていて、楽しかったです。
現代の私たちが、美術館や博物館で絵巻を手に取って鑑賞することは、あり得ないといっていいでしょう。
昔のひとがどのように絵巻を鑑賞していたか、丁寧に解説されていたのが興味深かったです。
みんな大好き鳥獣戯画はよく美術館のミュージアムでミニ絵巻で売られていますよね。
私も2巻持っていますが、結構しっかりしたもので楽しいです。
ただ、全部読み終わったあとに巻きなおすのが大変だ!と思っていたのですが、逆方向に巻くときに見直していけばいいのですね。
せかせかした読み方ではなく、ゆっくり楽しんでいたのだなぁと感じました。
まぁ、なにせ現代とは全体の発行量・個人の所蔵量が違いますから、一巻一巻を味わい尽くしていたのでしょう。
冒頭の「かわいい」と感じるこころは、どういうものなのか、という分析も面白かったのですが。
子供の絵日記のように上に絵、下に文がある完全分離型の中国式が日本では全く流行らず、絵の間々に、または絵の中に書き込む日本式が圧倒的に支持された、というのは始めて知りました。
遥か昔の日本から漫画の先駆けがあったのだなと感じる瞬間です。
ただ、以前から感じていたのですが、絵巻は同じ絵の中に主人公が複数いるスタイルが結構多くて、分かりづらい。
現代の漫画でも同様の手法はありますが、コマ割りがあればもっと分かりやすいのに、と感じてしまいます。
紹介された絵巻の内容に興味をもつとともに、どのように漫画的な要素が日本で発達していったのか。
そして何故、日本で漫画につながるスタイルが好まれたのか。
非常に刺激された本でした。