読書はしご

読書雑多文。

「わたしの好きなクリスマスの絵」

イタリアの老美術家フェデリコ・ゼーリが選ぶクリスマスの絵。

わたしの好きなクリスマスの絵

わたしの好きなクリスマスの絵

 

 選ぶというか、全てキリスト降誕図です。

世界各地のキリスト降誕図をローマから近代までを解説されています。

ひとつのテーマの絵だけを集める本というのは、なかなか珍しく、その道の老美術家の解釈も楽しめるとはなかなか贅沢な一冊。

 

私が最も惹かれたのは、コッレッジョの「キリスト降誕(聖夜)」。

ひたすらキリスト降誕図を眺めて飽きてきた頃に、これでもかというほど光輝く幼子イエス

その荘厳さがまぶしいばかりで、本当に素晴らしい作品です。

他の作品とは一線を画す、素晴らしい作品だと思います。

以降この着想は繰り返し他の作品に流用されるも、成功を収めたのはこの一枚のみと断ぜられるのも納得の1枚。

この絵を忘却することは難しい、これからクリスマスの時期が来る度に思い出すでしょう。

「夜の光」

アンソロジーから見つけた作家さん。

夜の光 (新潮文庫)

夜の光 (新潮文庫)

 

任務を抱えて孤独な夜、これからも私は夜空を見上げるだろう。

そしてその瞬間、私は孤独ではなくなる。

ただそれだけのことだ。

 

天文部な本を見つけたので、思わず借りたが素晴らしい青春の、どう生きるべきか懊悩する高校生達の物語だった。

夜の静けさのなかで孤独に深く考えるのは青春の特権。

夜、校舎の屋上から星空を見上げて、天体の悠久さに比して人間の小ささを感じられるのは天文部の特権。

 

自分が戦うことを知る仲間がいることは、何よりも強い味方だな。

高校から大学なんて、大人になったいまでは自分の人生を決めるまでいかない、只の進路にすぎない。

大学生になってから、社会人になってから、本人にやる気さえあれば全然人生なんて修正できるものだ。

だが、高校三年生って、はじめて親との対決することになる人が多い年齢でもある。

天文部四人にひとりずつスポットをあてて、それぞれの問題が明らかになり非常に楽しい。

天文部の仲間同士、友人関係ではないのが新鮮。

 

あと、観測会で食べているごはんが美味しそうすぎる。

私の高校では鍋をする発想がなかったなぁ。

せいぜいお月見団子を家でつくって持ち寄る程度だった。

惜しいことした!

「消費低迷と日本経済」

 一部同意、一部もやもや。

データから導く流れはなかなかなのに、データ以外で断言される内容がところどころ怪しくて最終的にはお勧めできない出来上がり。

成熟社会となってる日本経済は黄金を求めて触るもの全てを黄金としてしまうミダス王に擬えるのは上手い。

 

消費低迷と日本経済 (朝日新書)

消費低迷と日本経済 (朝日新書)

 

 

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「武者無類ー月岡芳年の武者絵」

以前見た浮世絵展から気になっててた、力強い武者姿の一枚絵。

かつて日本には歴史上の人物の勇壮な姿を楽しむ文化があったんだなぁと興味を持っていたところに本書発見。

浮世絵というと役者絵とか美人画、景色を題材にしたものもありますけど、この武者絵もなかなかどうして。

もうひたすら格好いい!の一言で、一日ずっと眺めていられました。。

武者無類―月岡芳年の武者絵

武者無類―月岡芳年の武者絵

 

 

 月岡芳年(つきおかよしとし)、1839-1892年。

江戸の終わりに生まれて、明治以降も浮世絵を描き続け、多くの作品を遺しているのですね。

浮世絵好きなので、名前は目にしたことがありましたが、本書で初めて詳しく知りました。

本書でも触れられていた「大日本名将鑑」、「月百姿」が結構気になります。

江戸から少し下ったおかげか、題材・構図の取り方等が江戸時代の代表的な浮世絵師とは異なり、それが独特の雰囲気を醸し出しているようです。

 

 

また、本書の魅力はこのいぶし銀な画の魅力をフルカラーで紹介するだけなく、その武将の逸話や生き様を余すところなく解説しているところです。

素晴らしきは、現代の感覚からすっとんきょうな解説をするとかは一切ないところ!

本書を編纂した歴史魂編集部よ、天晴れ!と拍手を贈りたいのですが。

どうやら現在は解散してしまったようです。

これは残念の一言!

「坂本司リクエスト! 和菓子のアンソロジー」

 一度図書館で借りたのに全く読めず、数年経ってまた借り直した本。

お題系アンソロジーとはかくあるべし!といっても良いほど、良作しかない一冊。

もちろん読了後には和菓子を頂きたくなるため、深夜に読むのはお勧めしない。

和菓子のアンソロジー (光文社文庫)

和菓子のアンソロジー (光文社文庫)

 

 

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「二十の悪夢 角川ホラー文庫創刊20周年記念アンソロジー」

 ハヤカワが一番アンソロのレベルが高いと思うのだけど、角川もなかなかレベル高いよなぁと感じられるアンソロジー。

 どの作品もレベル高いのだけど、恒川光太郎の「銀の船」がすごく良い。

この作者が醸し出す異世界の雰囲気ははまる。

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「12星座小説集」

「 星座をキーワードにアンソロジーかぁ。面白そう」って思って手に取った人を後悔させるには十分すぎるほど、良い作品がない。

星と消えそうな本を出版した講談社はなかなか勇気がある。

 駄作ばかり!と言っては過言でないものの、一番初めに収録された「安政元年の牡羊座」だけは非常に面白かった。

軽快な語り口と江戸時代の武士と星座という組み合わせがなかなか良い上に、しっかり星座のイメージを踏まえた上で物語が作られており、大変面白かった。

 

この最初の一作の出来栄えが良すぎて、後の作品が霞んでしまったような気がする。

星も一等星もあればそうでないものもある。作品もまた然り。

 

敢えてもう一作取り上げるとすれば、佐伯一麦の「二十六夜待ち」。

「二十六夜待ち」とは江戸時代の風習で、陰暦正月・7月の26日夜半の月光の中に弥陀、観音、勢至の三尊が現れるとした月見の風習、その雰囲気を感じる自分の名前も過去も知らない男が主人公の情緒的な一作。