「結婚式で本当にあった心温まる物語」
2018年の西日本豪雨があり、仕事を通じて感じるものが多々あり、良縁に恵まれ昨年12月に結婚式をしました。
お互いの親族のみのいわゆる地味婚でしたが、地元の神楽を呼んだり、私の父が暴走したり、なかなかトラブルなしでは進まずホテルの担当の方をやきもきさせてしまいました。感謝の言葉しかありません。
新生活も落ち着き、はてウェディングプランナーさんから見た結婚式とはどういうものだろう、とふと思い手に取った本です。
どんなにありがちな結婚式でも、はたまたこだわり抜いた結婚式でも、花婿、花嫁にとって、ただひとつだけの結婚式ということには変わりません。
ほとんどの結婚式が心温まるものでしょうが、この本で語られる結婚式は正に一級品の内容でした。
祖父の入院先を訪れる白無垢姿の孫、娘のバージンロードのために脳梗塞で車椅子からリハビリを頑張る父、娘が離婚しないためにバルーンリリースをなんとか工面して贈る母。
もう涙なしでは読めませんでした。
晩婚ですし、夫婦ともに祖父母はどちらも他界していたから仕方ないのですが、結婚しそうにない孫を祖母はいつも心配してくれていたので、祖父母が出席するエピソードは本当にいいなぁと思いました。
いま、世界は新型コロナの影響で、思い通りの結婚式ができない方が大勢います。
会社の後輩も、春予定していた式を秋に延期をしたと苦しげに話していました。
規模を縮小したり、リモートでしたりする動きをあるようですが、またこの本のように、気持ちよく晴れ晴れと新郎新婦の門出を祝える情勢に一刻も早くなってほしいものです。
「境内ではお静かに」
全体的には99点なのに、4話目がどうしても納得いかないので60点。
良くできたお話といえる。
兄が婿入りした神社に転がり込まされた大学中退生と、冴えざえと美しいこれまたとある事情で神社に転がり込んできた花盛りの巫女さんの子のボーイミーツガール本。
全体的にはライトノベルで、面白い。
ただ厳しい職場に耐えかねて自殺した先輩が忘れ去れずに、自分も教師なんて無理って大学中退した主人公。
菅原道真みたいな元人間の神様が、後からの人間に良いように使われているみたいなの嫌だ、だからその枠組みが嫌いな自分には信心がない、という主張。
先輩が自殺したから大学やめた自分は、つまり先輩言い訳にして現実から逃避していて、それって先輩の自死を利用してるって思わないのかな??
ここらへんの考え方、よくわからない。
そして、第4帖の顛末は納得できないというか容易に赦してはいけない事件ではないかと思う。
女性を手にいれるために、自作の薬混入して拉致する人を「大変反省していたので」とあっさり赦した上、事件自体を積極的に隠匿してもいいのだろうか…。
そもそもその前に偽アカウント作って、嘘の就活失敗話を仕込んだり、実在しない妹と相談してくれって、巫女さんな彼女を誘い出したりして、悪質にも程がないです?
最後の話や彼氏彼女の事情等は凄く良い、絶賛したい。
伏線の回収もすごく上手い。唸りました。
だけど、姉を自殺に追いやったかもしれない事態から男性不信に陥ってもおかしくない彼女が、同じく女性の意思をまるで無視した犯行をした大学生に対してあまりにも軽くて、バランスが取れていないように感じる。
惜しい。
第4帖がなければ100点なのに、あの話の存在意義はなんなのだろう。
「わたしの好きなクリスマスの絵」
イタリアの老美術家フェデリコ・ゼーリが選ぶクリスマスの絵。
選ぶというか、全てキリスト降誕図です。
世界各地のキリスト降誕図をローマから近代までを解説されています。
ひとつのテーマの絵だけを集める本というのは、なかなか珍しく、その道の老美術家の解釈も楽しめるとはなかなか贅沢な一冊。
私が最も惹かれたのは、コッレッジョの「キリスト降誕(聖夜)」。
ひたすらキリスト降誕図を眺めて飽きてきた頃に、これでもかというほど光輝く幼子イエス。
その荘厳さがまぶしいばかりで、本当に素晴らしい作品です。
他の作品とは一線を画す、素晴らしい作品だと思います。
以降この着想は繰り返し他の作品に流用されるも、成功を収めたのはこの一枚のみと断ぜられるのも納得の1枚。
この絵を忘却することは難しい、これからクリスマスの時期が来る度に思い出すでしょう。
「夜の光」
アンソロジーから見つけた作家さん。
任務を抱えて孤独な夜、これからも私は夜空を見上げるだろう。
そしてその瞬間、私は孤独ではなくなる。
ただそれだけのことだ。
天文部な本を見つけたので、思わず借りたが素晴らしい青春の、どう生きるべきか懊悩する高校生達の物語だった。
夜の静けさのなかで孤独に深く考えるのは青春の特権。
夜、校舎の屋上から星空を見上げて、天体の悠久さに比して人間の小ささを感じられるのは天文部の特権。
自分が戦うことを知る仲間がいることは、何よりも強い味方だな。
高校から大学なんて、大人になったいまでは自分の人生を決めるまでいかない、只の進路にすぎない。
大学生になってから、社会人になってから、本人にやる気さえあれば全然人生なんて修正できるものだ。
だが、高校三年生って、はじめて親との対決することになる人が多い年齢でもある。
天文部四人にひとりずつスポットをあてて、それぞれの問題が明らかになり非常に楽しい。
天文部の仲間同士、友人関係ではないのが新鮮。
あと、観測会で食べているごはんが美味しそうすぎる。
私の高校では鍋をする発想がなかったなぁ。
せいぜいお月見団子を家でつくって持ち寄る程度だった。
惜しいことした!
「消費低迷と日本経済」
一部同意、一部もやもや。
データから導く流れはなかなかなのに、データ以外で断言される内容がところどころ怪しくて最終的にはお勧めできない出来上がり。
成熟社会となってる日本経済は黄金を求めて触るもの全てを黄金としてしまうミダス王に擬えるのは上手い。
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「武者無類ー月岡芳年の武者絵」
以前見た浮世絵展から気になっててた、力強い武者姿の一枚絵。
かつて日本には歴史上の人物の勇壮な姿を楽しむ文化があったんだなぁと興味を持っていたところに本書発見。
浮世絵というと役者絵とか美人画、景色を題材にしたものもありますけど、この武者絵もなかなかどうして。
もうひたすら格好いい!の一言で、一日ずっと眺めていられました。。
月岡芳年(つきおかよしとし)、1839-1892年。
江戸の終わりに生まれて、明治以降も浮世絵を描き続け、多くの作品を遺しているのですね。
浮世絵好きなので、名前は目にしたことがありましたが、本書で初めて詳しく知りました。
本書でも触れられていた「大日本名将鑑」、「月百姿」が結構気になります。
江戸から少し下ったおかげか、題材・構図の取り方等が江戸時代の代表的な浮世絵師とは異なり、それが独特の雰囲気を醸し出しているようです。
また、本書の魅力はこのいぶし銀な画の魅力をフルカラーで紹介するだけなく、その武将の逸話や生き様を余すところなく解説しているところです。
素晴らしきは、現代の感覚からすっとんきょうな解説をするとかは一切ないところ!
本書を編纂した歴史魂編集部よ、天晴れ!と拍手を贈りたいのですが。
どうやら現在は解散してしまったようです。
これは残念の一言!
「坂本司リクエスト! 和菓子のアンソロジー」
一度図書館で借りたのに全く読めず、数年経ってまた借り直した本。
お題系アンソロジーとはかくあるべし!といっても良いほど、良作しかない一冊。
もちろん読了後には和菓子を頂きたくなるため、深夜に読むのはお勧めしない。
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