「海の家のぶたぶた」
矢崎存美さんのぶたぶたシリーズ、疲れたときに読むと大変心が癒されるので最近はまってます。
このぶたぶたシリーズ、シリーズではありますが続き物ではありません。ぶたぶたさんはあるときはシェフ、あるときは本屋さん経営と、巻によって話の要となるぶたぶたさんの設定が違うようです。
ぶたぶたさん本人は一見ただのぶたのぬいぐるみ、布張りの体につぶらなビーズの瞳。なのに人間社会でふつうに働いて、妻がいて、なんなら子どもがいるときもあって、戸籍はどうなっているのか。わけが分かりません。
枯れた現代社会に生きるサラリーマンやOL、女子高生にこども、みなそれぞれ悩みを抱えながら生きていますが、ぶたぶたさんに会うと、明らかにぬいぐるみなのに普通生きる姿になぜか癒されていきます。
人間だと属性で判断してしまうから、その目の鱗を取り払って考えられる、考えてしまう、フラットな存在がぶたぶたさんなのでしょう。
登場人物の癒しを追体験していくのが良いんですよね。
一冊に短編5本程度、通勤や就寝前にさくっと読めます。
今回はバイトがしたい女子高生、山から引っ越ししてきた小学生…、絵本から飛び出してきたみたいなこぶたの家のような海の家を巡り、短編が五編。
最後の合コンまみれの女性は珍しくお悩み解決系ではなかったような、まぁ仲間の合コンセッティングに夢中になってる子が、そこから離れて、自分だけの休日の過ごし方を考えられるようになる、ってことなのかな?
あと彼女にひたすらテディベアをプレゼントし続けてフラれそうな大学生の内田君がわりかしいそうで良かったです。
昔から、察するというか、いわゆる空気を読むというのがうまくない、というのは言われていたが、あまり気にしたことがなかった。特にそれで困ったことがなかったからだ。でも、ぶたぶたが説明してくれようとしたのに、自分が全然わからなかったということに、ショックを受けていた。
なかなか自分の癖に気付いてなおすって難しいですよね。うまくいってる、というのも本人だけで、周りは「うまくいってない!」て思ってることもまた多し。
海の家で出てくるかき氷が自家製シロップとか美味しそうな描写なんですけど、私はお腹弱くてかき氷に魅力を感じられなかったのが残念です。毎回料理の描写がほど良いのも魅力的な本ですね。