読書はしご

読書雑多文。

「夜空と星の物語 日本の伝説編」

夜空と星の物語 日本の伝説編

夜空と星の物語 日本の伝説編

星座というとギリシャの星座が一般的ですよね。
また日本でも、大陸から伝来した中国の星座が古来より使われてきた経緯がありました。

そんな中でも、日本で語られてきた星をめぐる物語が集められていて楽しかったです。
火星の王子、すばるの6人の女など、日本独自っぽい話あったり。
やっぱり織姫と彦星に似た話があったりして、この話の影響力の強さには驚かされました。

他にもシリーズがあるので、ぜひ読んでみたいです。

「旅者の歌 始まり地」「旅者の歌 中途の王」

旅者の歌 始まりの地 (幻冬舎文庫)

旅者の歌 始まりの地 (幻冬舎文庫)

旅者の歌 中途の王

旅者の歌 中途の王

「試しの日」に人から獣に変わる。

獣に変わった兄姉と婚約者を元に戻すため、「リョシャ」として世界へ旅立つ少年。
独特の世界と語り口調が何とも言えない感じ。

SONYのReaderで読んでました。
久しぶりに図書館で見かけて借りましたが、ほぼ打ち切りのように終わったのですね。
終わりが気になっていたので残念です。

ファンタジーとして良い作品かと言えば、そうでもないかな。
人が動物に変わるという発想はいいけど、リョシャが万能すぎて。
勝手に部屋まで作ってくれる大樹が茂る船は凄く乗りたいですけど。
いろいろ新しい世界を知って戸惑うけど、困難さが薄くてリアルさに欠ける。
読めば読むほど謎が深まり、こんな話を広げて大丈夫か心配になります。
また、そこに住む人の暮らしが垣間見れないので、ぺらぺらファンタジーだなと思うのですが、やっぱり謎が、世界の真実が気になって。

しかしながら、3巻目を2巻目と併せて出発という変な刊行をしたせいか図書館に続刊がないので私が真実を知ることがなさそうです。
作者と出版社は反省して欲しい。

「"文学少女"と恋する挿話集1」

 

文学少女シリーズの短編集第1弾。

短編というか小話レベル、本編の補足として楽しめる一冊。

小話が面白いんだけど、このシリーズ魅力はやたら深刻な設定と古典との絡み合いが楽しかったのだな、と改めて認識させられた。

一応、古典と絡めても、本編ほど深くないので濃厚さが薄れてます。

あの濃厚さが苦手な人にはいいかもしれない。

 

本編の主人公・心葉目線から解放され、遠子や麻貴目線の物語があったりと本編にない魅力がありました。

特に心葉くんがよくわかってない麻貴や流人がどういう思いで、本編のあの場面をすごしていたか。

舞台裏を見る感覚で楽しめました。

遠子や美羽から物語を見ると、途端にコバルト文庫っぽくなって、違う作品のように胸キュン。

いかに心葉が鈍感かわかりますね。

個人的にはなぜ二人きりしかいない文学部が潰れないか、理由が明らかになってすっきりです。

 

「恋ひ恋ひて逢える時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば」の大伴坂上郎女の歌は惚れ惚れしました。

万葉集らへんの率直に気持ちを歌い上げる作風いいわぁ。

 

あとエリナー・ファージョンの「ムギと王さま」読みたいなぁ。

実家が本尽くし…素敵な環境すぎる。

「人生はあはれなり… 紫式部日記」

 

人生はあはれなり… 紫式部日記

人生はあはれなり… 紫式部日記

 

 他の本でも読んだことがあるけど、紫式部てネガティブさん。

本書では、平安系絶望女子という大変失礼な称号を頂いています。

紫式部日記をベースに、宮仕えの日々を漫画で紹介されていて、非常に分かりやすい。

藤原一門として彰子に仕えた紫式部、その宮仕え前に源氏物語をすでに書き始めていたとは知りませんでした。

そして宮仕えにより感じる紫式部の失望、周りへの厳しい目線、憂いに戸惑いに無常観。

教養隠すために「漢字の一の字もわかりませーん」とか大変だったんだろうな。

紫式部がネガティブ発言しちゃうのも、時代や境遇に大いな原因があるわけで。

単に紫式部がネガティブなわけじゃない…うーん、いやいや本人の性格もあるかな。

読みやすくて、平安系絶望女子に共感してしまう。

平成も終わりが見えてきた時代に生きる私たちは紫式部に会ってなんて言えるだろう。

まだまだ職場で男性以上に知識があると疎まれたり。

でも、平安時代と違って女性も漢字使えてます。

文学の地位は上がりました。

そして貴女の源氏物語が好きで海外から訪れる人もいます…などなど。

平安から進んだことも進みきれてないこともありますね。

 

そして式部を語る上で欠かせない清少納言

同じような環境ながらも、天真爛漫に育った清少納言

同じような才に恵まれながらも抑圧されて育った紫式部

「兄弟より漢学の才能あってもな。お前が男なら良かったのに」て父に言われたら、やる瀬ないですよ。

また、それぞれが仕えた主が敵対する状況。

性格が真逆なので、実際には宮仕えの時期がずれており面識がないながらも当然反発し合うものと語られる二人ですが、もし仕える主が対立せず同僚であったなら、きっと清少納言は漢学の才などを隠す紫式部の本質を見抜き、「ありのままでいい。言いたい人には言わせおけ。いずれ黙る」とアドバイスして、良いロールモデルになったと思うんですよね。

ロールモデルいないって、自分で悩みながら切り開くしかなくて、よっぽどの自信家じゃないとつらいですからね。

そんな彼女にも、本来分かれている部屋を一緒にするほど仲の良い友人小少将がいたりして。

あー、やっぱり女の友達って大事ですね。

早くに亡くなっちゃいますけど。

 

源氏物語を単にプレイボーイの物語でなく、紫式部が宮廷で見つめたたくさんの人々の一生、それが物語として結実したのが源氏物語なんだろうなあとしみじみ。 

巻末には原文が書いてあり、「紫式部が書いた本当の文に触れてほしい」って感じで好きです。

源氏物語より紫式部日記読みたいですね。

私が高校生の頃にこんな素敵に古典を紹介してくれる本があったらなら、もっと古文の点数良かったろうな!

今の高校生が羨ましい!

「メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション」

 

メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション
 

短編集「本をめぐる物語 一冊の扉」に収録されていた「メアリー・スーを殺して」が非常に面白かったので、同タイトルが本になっていた本書も手に取ってみました。

この本の謎に全然気付かなかった。悔しい。

読書メーターで赤っ恥かいた気がする。

 

以下ネタバレ。

続きを読む

「芸術がわからなくても美術館がすごく楽しくなる本」

 

 サブタイトルの「知識がなくてもできる教養の磨き方」というタイトルはちょっと余分かもなぁ、と思ってましたが、ラストを鑑みると納得。

美術鑑賞に限らず、良書です。

 

まずは、美術館へふだん行かないひとに、美術館てこういう楽しみかたもある。

カフェでも庭でもいい。

美術品だって、自分とのファーストインパクトが大事なんだ。

解説?イヤホンガイド?そんなのに振り回されなくてもいい。参考程度でいいんだ。

っていうのは、まずは美術館に親しむために、大切だと思います。

もちろん個人的には、そこから発展して、作家自身や、美術史、時代背景など、それこそ教養を身につけていったほうが深く深く楽しめるようになるとは思いけど、この本の趣旨からすると蛇足かな。

 

混んでいる美術館は疲れるからなぁ…個人美術館は生存してたら本人に会えることもあるよ!みたいなアドバイスも面白いですけど(ご本尊にお会いした経験がないので、ぜひ体験したい)。

個人的には、エア買い付けとタイトルを自分で考えるっていうのは目から鱗って感じでいいな!と思いました。

日本美術も西洋美術もインカ文明もオリエント美術もわりとざっくばらんに楽しめるなのに、現代美術苦手なんですよねー。

岡山県在住で瀬戸内国際美術祭なんて、毎週行ける最高の立地なのに、現代美術に興味持てないせいで、せっかくの地の利を活かせていない。

この残念な状態を上記2点の攻略法で、解決できるかも、とわくわくしてます。

分からないし、共感できなかったら、もう自分で再定義すればいいのか!(いいのかなー、いやいや、いいのだ)

 

て、美術館の楽しみハウツーだけで、本書は良書なのではないのです。

ラスト3節が美術に限らず全てのことに大切だといえることだと思い、良書だと思いました。

第5章

07  好きなものをムチの眼で、嫌いなものをアメの眼で

08  一つの見方に固執せず、他の見方に「ゆれる」ことも大切

09  いろんな人と意見を交換し、自分に新しい眼を啓く

  私はそういう感覚が大事だと考えています。AならA、BならBと一つに決めてしまえば、そのほうがはっきりして、気持ちもすっきりするかもしれません。また一つの考え方をしっかり持っているほうが「ブレない」として評価されたり、リスペクトを得たりすることもあります。

 けれども、少なくとも美術鑑賞においては「ブレない」のは必ずしもよいことではありません。なぜなら、一つの見方に固定されてしまうと、他の見方を認めようとしなくなるからです。

 一つの見方にひとたびロックインされたら二度とほかの見方をしないというのでは少々頑迷すぎます。

「図書館奇譚」

 

図書館奇譚

図書館奇譚

 

図書館の地下に潜む奇妙な世界。

知識に満ちた脳を吸いたい老人。

羊男。

目が痛くなるほどの美少女。

ある日図書館を訪れた気弱な主人公は、図書館の地下の牢屋に閉じ込められ、本を完璧に暗記することを求められる。

羊男から「本を読んだら、脳を吸われちゃうよ。知識が詰まった脳は美味しいんだって」と 老人の企みを聞かせられる。

絶望する主人公の元に現れる、美しい少女。

果たして主人公は助かるのか。

 

シンプルながらも不思議で魅力的なシチュエーションに、わくわくします。

後書きによれば、改訂に改訂を重ねて本作はなんとヴァージョン4。

不可思議な世界観、完結しない雰囲気があり、改訂を重ねるのも分かる気がする。

 

オスマン・トルコの収税政策に関する本を読みたくなります。

もちろん羊男のできたてドーナツで小休憩をとりながら。

脳が狙われてなければ、二、三日収容されてみてもいいかな。

そういうセミナーがあれば参加したい。

なにせ本屋に泊まれる時代ですもんね。いつかできたりして。