「芸術がわからなくても美術館がすごく楽しくなる本」
サブタイトルの「知識がなくてもできる教養の磨き方」というタイトルはちょっと余分かもなぁ、と思ってましたが、ラストを鑑みると納得。
美術鑑賞に限らず、良書です。
まずは、美術館へふだん行かないひとに、美術館てこういう楽しみかたもある。
カフェでも庭でもいい。
美術品だって、自分とのファーストインパクトが大事なんだ。
解説?イヤホンガイド?そんなのに振り回されなくてもいい。参考程度でいいんだ。
っていうのは、まずは美術館に親しむために、大切だと思います。
もちろん個人的には、そこから発展して、作家自身や、美術史、時代背景など、それこそ教養を身につけていったほうが深く深く楽しめるようになるとは思いけど、この本の趣旨からすると蛇足かな。
混んでいる美術館は疲れるからなぁ…個人美術館は生存してたら本人に会えることもあるよ!みたいなアドバイスも面白いですけど(ご本尊にお会いした経験がないので、ぜひ体験したい)。
個人的には、エア買い付けとタイトルを自分で考えるっていうのは目から鱗って感じでいいな!と思いました。
日本美術も西洋美術もインカ文明もオリエント美術もわりとざっくばらんに楽しめるなのに、現代美術苦手なんですよねー。
岡山県在住で瀬戸内国際美術祭なんて、毎週行ける最高の立地なのに、現代美術に興味持てないせいで、せっかくの地の利を活かせていない。
この残念な状態を上記2点の攻略法で、解決できるかも、とわくわくしてます。
分からないし、共感できなかったら、もう自分で再定義すればいいのか!(いいのかなー、いやいや、いいのだ)
て、美術館の楽しみハウツーだけで、本書は良書なのではないのです。
ラスト3節が美術に限らず全てのことに大切だといえることだと思い、良書だと思いました。
第5章
07 好きなものをムチの眼で、嫌いなものをアメの眼で
08 一つの見方に固執せず、他の見方に「ゆれる」ことも大切
09 いろんな人と意見を交換し、自分に新しい眼を啓く
私はそういう感覚が大事だと考えています。AならA、BならBと一つに決めてしまえば、そのほうがはっきりして、気持ちもすっきりするかもしれません。また一つの考え方をしっかり持っているほうが「ブレない」として評価されたり、リスペクトを得たりすることもあります。
けれども、少なくとも美術鑑賞においては「ブレない」のは必ずしもよいことではありません。なぜなら、一つの見方に固定されてしまうと、他の見方を認めようとしなくなるからです。
一つの見方にひとたびロックインされたら二度とほかの見方をしないというのでは少々頑迷すぎます。