読書はしご

読書雑多文。

「追放者の機略 下」

 

 アルベリッヒ好きとしては申し分ない本書です。

皆に畏れられる武術指南役に幸いよあれ!

誰が、この堅物に春が来ると思っただろうか!!

 

と同時に、セレネイ好きは本書を破りたくなるような展開です。

冒頭はセレネイの長女エルスペスに負けず劣らず、セレネイ自身も夢見がちな女の子だったんだなーと微笑ましくなります。

仮面舞踏会のシーンなんて、コバルト文庫のように甘々じゃないですか。

中高生が実に好きそうなシーンです。

 

しかし、セレネイは若いとは言え、一国の女王。

普通の女の子みたいに幸せな結婚、できれば自分の気に入る人を伴侶にしたいという希望を抱いてはいけなかったのか、あまりにも辛い現実を味わうことになって、ちょっと同情しました。

母はおらず、兄弟もいない。唯一頼りにしていた父は戦争で死に別れ、頼るべき人はいない。

彼女の「使者」は女王補佐する役割は果たしても、彼女自身の支えではなかった。

セレネイの「共に歩むもの」も、女王の「共に歩むもの」であって、まだ経験の浅い女性としてのセレネイの心の支えとしては不十分だった。

策を弄する敵側が見事だったとは言え、使者側も後手に回ってしまったし。

彼女だけが悪いわけじゃないんだけどなあ!と。

もっと早く女王補佐の使者がタリアであれば、防げたかもしれない。

タリア生まれていないから、無理なんだけど。

そう思わずにはいれない、セレネイの辛さ。

 

しかし、本作の出来事があったから、エルスペスが生まれ、ヴァルデマールに魔法が復活するんですよね。

もう一度、「追放者の矜持」、タリア~エルスペスぐらいまで一気読みしたくなりました。