「ともだち同盟」
落涙戦争を思い出しながら図書館で借りたら、サイコホラーな内容で夏にぴったり…。
- 作者: 森田 季節
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/26
- メディア: 単行本
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学生ならではの閉じた人間関係、閉じた世界。そこで帰結させたい欲望。
秘密をバラさない、嘘を言わないという「ともだち同盟」のルールによる叙述の魅力。
西尾維新とか好きそうな人向け。
登場人物は高校生だが、この閉塞感は中学生のよう。
女子二人は小学生からの因縁で理解できるが、弥刀は姉ばかりで育ったとしても無理がある。
行動範囲も中学生レベルだし、なぜ高校生にしたのか。
坂口安吾ばりの千里の狂人ぷりが物語の真髄と思わせておきながら、最後の朝日の独白に膝を打ちました。
閉じた永遠の美と愚直に生き続ける自由。
どちらを美しいと思うか。
朝日は毅然とした態度でこたえる。死んでいる者なんて何も怖くない。いつだって一番恐ろしいのは自分のように生きている人間のほうだ。
「…苦しかろうと、私はこの戦いの日々を胸に刻みつけて生きていく。それが高貴な人間の生き方だからよ。あなたが人を呪うのは、あなたがとても弱い人間だったからよ。まだ、そんなことにも気づけていないなんて幸せなことね」
わたしは朝日が美しいと思いました。
束縛が終わり、彼女の人生はこれから再開することでしょう。
しかし、女々しい弥刀では「トリスタン(トリスタンとイゾルデ)」の効果ないと思うなぁ。
朝日にとって弥刀って、千里との力関係を象徴する勝者への景品ぐらいしか価値なさそう。
しかし、森田季節という作家は、路線が安定しないというか幅が広いというか。
個人的には萌え系(死語か?)に邁進せずに、こういう青春時代を題材とした小説を量産してほしい気持ち。