読書はしご

読書雑多文。

「イギリス毒舌日記」

 関西出身の女性がイギリス片田舎にツッコミ入れまくり!

だけかと思ったら、後半の義父母とのエピソードは胸にくる話が多くて、感動した。

装丁からは想像もできない海外生活の辛さや厳しさ。良い本だった。

イギリス毒舌日記

イギリス毒舌日記

 

 

全編において、関西系ならではの鋭いツッコミが楽しい。

読み手はアハアハ笑って読めるけど、イギリス社会のとんでもない状況を、なんとかツッコミをして作者は乗り切っているだと思うと、ちょっとぞっとする。

仕事の意欲が低いとか、全然物を片づけないとんでもない生活状況とか。

でも、日本を一歩出たら他国は軒並みそんな感じがするので、日本がやたら神経質で異常なのでは?と感じる昨今。

もしかして日本が異常なのでは…?

イギリスむちゃくちゃだな!と思いながら、この2つのエピソードはイギリスのほうが一歩進んでいる気がする。

 「特別なお客様だけの日」

デパートの上司が障害のある子どもの親だから、ということで開催される。

障害がある親子のために開かれるデパートの営業日。

このデパートだけで、イギリスで一般的かどうかは分からないけど、こういう営業日があるのって素晴らしいなぁ。

日本でもあるんだろうか?、とちょっとイギリスいいな思えるエピソード。

 

「養子縁組」

子供を育てる能力がないな、と判断されたら、速やかに子供が保護されて、養子縁組に出されてた、というエピソード。

実際はすぐではなくて、イギリスでは家庭支援として、子供にどう接するか、なにを食べさせればいいのか等の支援プログラムがあると本書で触れられているので、滅多にはないエピソードだとは思うけれど興味深いエピソード。

 

あと最後の章の、イギリスの義父母との関係が心温まる感じで、本当に良かった。

義父の最期のエピソードは切なくて、他の義兄弟の嫁の酷さもすごいが、筆者の義父母に対する姿勢は本当にすごいと思う。

日本人同士でさえ、嫁姑問題は大変なのに、生まれた国が違うために苦労も並大抵ではないと思うのによく頑張っていて、本当に偉いなと思った。

 

あと、日本人のほうが凄いのだ!優秀だ!みたいな昨今のノリとは違って、文化が違うんだからしゃーない、国民全員を変えないといけないんだったら受け容れる、というのが現実的。

ついつい日本人目線で、自分たちのほうがいいんじゃ?と思ってしまいがちだけど、どっちが正しいかなんて決められないんだろうなと。

 

ブルーベリーヨーグルトマフィンのレシピだけのってるので、次の休みに作ってみよう。

「18の奇妙な物語 街角の書店」

ハヤカワミステリマガジンのノリで選ばれた「奇妙な味」の短編18篇。
編者の中村融氏のコメントが秀逸。
巻末の作品紹介されている「時の娘」等も借りたくなりました。

まずは太っちょ礼賛の「肥満翼賛倶楽部」でなんだこりゃと思いながらも、「ディケンズを愛した男」で絶望に囚われ、「お告げ」でにっこりしたら、読者はもう本書の虜。
一番は爆笑した「M街七番地の出来事」に。
タイトルから恐ろしい殺人事件かと思ったら、ガム。
男の子がガムを噛み続けて生まれたものに爆笑。
捨てたガムは噛みたくないなぁ。

あと「旅の途中」は是非映像化して欲しい。首が体を求めて、孤軍奮闘するなんていったい誰が思い付くと言うの?

本書は「奇妙な味」というテーマで選ばれた短編集。
江戸川乱歩が造語し、そこから「読後に論理では割りきれない余韻を残す、ミステリともSFとも幻想怪奇小説ともつかない作品」という意味に発展した作風を示す言葉。
確かになんとも言いがたい作品が多い。

「姉の夫」はホラーだけど、切なくて良い。

「ナックルズ」は嘘から真の都市伝説。サンタクロースの対抗軸がいたら?

「試金石」すべすべした石、怖い。店主は悪徳商人め。

「アダム氏の邪悪の園」男性じゃなくても映像化して欲しい。

巻末のあとがきも、編者がどういう意図で(もちろん奇妙な味を追及して)、どういう更正にしたかったかが語られていて楽しい。

「追放者の機略 下」

 

 アルベリッヒ好きとしては申し分ない本書です。

皆に畏れられる武術指南役に幸いよあれ!

誰が、この堅物に春が来ると思っただろうか!!

 

と同時に、セレネイ好きは本書を破りたくなるような展開です。

冒頭はセレネイの長女エルスペスに負けず劣らず、セレネイ自身も夢見がちな女の子だったんだなーと微笑ましくなります。

仮面舞踏会のシーンなんて、コバルト文庫のように甘々じゃないですか。

中高生が実に好きそうなシーンです。

 

しかし、セレネイは若いとは言え、一国の女王。

普通の女の子みたいに幸せな結婚、できれば自分の気に入る人を伴侶にしたいという希望を抱いてはいけなかったのか、あまりにも辛い現実を味わうことになって、ちょっと同情しました。

母はおらず、兄弟もいない。唯一頼りにしていた父は戦争で死に別れ、頼るべき人はいない。

彼女の「使者」は女王補佐する役割は果たしても、彼女自身の支えではなかった。

セレネイの「共に歩むもの」も、女王の「共に歩むもの」であって、まだ経験の浅い女性としてのセレネイの心の支えとしては不十分だった。

策を弄する敵側が見事だったとは言え、使者側も後手に回ってしまったし。

彼女だけが悪いわけじゃないんだけどなあ!と。

もっと早く女王補佐の使者がタリアであれば、防げたかもしれない。

タリア生まれていないから、無理なんだけど。

そう思わずにはいれない、セレネイの辛さ。

 

しかし、本作の出来事があったから、エルスペスが生まれ、ヴァルデマールに魔法が復活するんですよね。

もう一度、「追放者の矜持」、タリア~エルスペスぐらいまで一気読みしたくなりました。

「追放者の機略 上」

 
アルベリッヒ目線なので楽しめているんだけど、武術指南役で基本的に怖い方なので、第三者目線だと「全然喋らない。指南役マジ怖いぃぃぃぃぃぃ」てなるんだろうな。
とか思いながら、自室の素晴らしいステンドグラスの出来映えにわくわくするアルベリッヒに愛しさを感じる本作。
アルベリッヒ好きは読んで大満足でしょう!
 
先王であり実の父を失った女王セレネイ、王としての威厳は徹底できず、評議会は自分達に都合のいい婿候補達の選定に大忙し。
そんな中、大寒波のおかげで催される氷の祭典。
セレネイは女王として、ヴァルデマールに君臨できるのか。
 
 
シリーズの他の作品では、しっかり女王様なセレネイも、まだうら若き女性。
先を知っているのでセレネイは死なないわーって安心して読めつつ、お気楽にアルベリッヒの恋愛も楽しめる。
アルベリッヒの恋愛がですよ?
すぐ、下巻も読まなくちゃ!