「駅伝日本一、世羅高校に学ぶ 「脱管理」のチームづくり」
その強さが知りたくて読み始めましたが、高校駅伝に留まらぬ内容に胸が熱くなりました。
駅伝日本一、世羅高校に学ぶ 「脱管理」のチームづくり (光文社新書)
- 作者: 岩本真弥
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/12/15
- メディア: 新書
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世羅高校を長年支える岩本監督本人による著。
ご本人も、そして青学の原監督も、世羅高校出身とは知りませんでした。
1学年違いで、一緒に走っていたお二人が、いま日本の駅伝を活性化させる監督として成果をあげられているのは凄いと思います。
また、二人ともが兎にも角にもスパルタな(当時はどこもそうだったと言ってますが)自身の高校生時代を猛省して違う指導法を追い求めた結果、似たようなチーム作りをされているのが印象的です。
タイトルで「脱管理」と銘打ってますが、これはミスリード。
生活指導は徹底しても、言いすぎない。手綱を引き締めた管理かと。
また実際に指導を受けた選手のエピソードを見ると、自分のためじゃなくて監督のために成果を残したかったという感じのことを発言しているのが印象的。
私も営業職として「自分の成績だけ達成すればいい!」と思っているときよりも、「この店のために!みんなで頑張ろう!」と思っているときのほうが自分と店全体のノルマの達成率が上がっているのを実感しているので、合点がいきます。
全体を見渡したほうが冷静になれるというか、皆で達成するために自然とチーム力が高まるように挨拶とか声掛けが活性するというか。
そういう雰囲気が全体で熟成すると、「みんなで楽しんでいこう」な感じに自然となるんですよね。
だから、岩本監督が「女子に対してはあまり何もしていない」と言ってますが、いがみ合いやすい思春期女子を「ハッピーになりたい」と自分たちで勝手に暴走して入賞ふっ飛ばして優勝しちゃうチームになる基礎を作り上げたのが監督の力量だと思います。
嫌な上司の時には部下としても「まだできる…ただ、この上司の手柄になるのは悔しい」と適当なところでブレーキを踏みますし、良い上司の時には「ここまで上司が頑張ってくれてるのならば、部下としても成績として報わねば。アクセル全開」と思いますもの。
また、駅伝だけでなく、地域活性や日本マラソン界まで語られています。
世羅高校自体の歴史が結構面白くて、なぜ「駅伝の町」となったのか。
そして、現在は駅伝をし続けられる町として、選手を巻き込んで地域づくりの核として活用されているのが凄い。
私は隣県の岡山ですが、世羅のような中山間地域がいかに辛い状況かは都会の人より肉薄して感じられます。
特に中国地方の、都会(関西圏)が近くにない中山間地域は観光で名をあげるといっても、都会の人を誘致し辛い分ハンディキャップはものすごいのです。
気軽に都会から行ける距離じゃないし、交通機関もほぼないですからね。
これは難題だ…でもずっと駅伝を応援してきた世羅地域ならできるかもしれない。
また、最近低迷著しい日本マラソン界にも、「マラソンはずっと記録更新されていない。短距離はできた、長距離はどうだ」と苦言を呈されています。
日本陸連が変わらないといけない、と言われていますが、ここを変えるために岩本監督や原監督が新しい風を送り込んでる最中なのですね。
一駅伝ファン、マラソンファンとして、注目していきたいです。
最期に世羅高校は留学生の子も走っているので、ずっと私学だと思っていました。
県立高校だったのですね。
また岩本監督も監督業ではなく、学校の先生。
駅伝の成績だけでなく、生徒のことを考えて指導される姿はまさに教育者。
これからも世羅高校の走りを見守っていきたいと思います。