読書はしご

読書雑多文。

「深泥岡奇談」

「この世に不思議なこともある」を地でいく本書。
ホラーというわけでもなく、妖怪ものってわけでもない……よね?
そこらへんが曖昧模糊とされていて、そこが本書の魅力なのかも。

深泥丘奇談 (幽BOOKS)

深泥丘奇談 (幽BOOKS)

読み方は「みどろおかきだん」


まず、執筆者、綾辻行人ぽいミステリー作家の主人公がある日、近所の深泥丘(みどろがおか)病院になんとなく検査入院するのがきっかけ。
なんと病院の壁に、「ちちち、ちちちち」と音を発する人間の顔のような盛り上がりを目撃するところから怪異現象スタート。
京都っぽい街を舞台にローカル線やら川やら送り火で繰り広げられる怪異。
あんまりにも不思議なので、怪異なのか主人公がキテるのか判然としない。

だってもう、主人公が気を失いすぎ。
読んでて、「もうちょっと起きてて!!ちょ、倒れこむの待った!……あ、だめだコイツ。あぁー」て毎回思う。

頼りない主人公は京極堂シリーズの関口をオマージュしてるのかな。
文中で京極堂の「この世には、不思議なことなど何もないのだよ」に言及してるし。
そういえば関口君も小説家であった。

ただ相方が怪しい古本屋の店主でなく、こちらの相方は小説家であり、「あなた、大丈夫なの?」と白々しく見守る妻(小野不由美女史?)なので謎解きはされずに読者は悶々としながら話が終わる。
うん、小野不由美が京極ばりに事件解決するのも面白そうだけど…駄目だ。
キャラと作風が異なるな。

するめのような珍味的味わいがくせになるのか、なんと続刊があるらしい。
好評だったのか。驚いた。
ぜひとも読みたい。
果たして珍味な面白さは続くのか。
「待て、而して希望せよ」