「十年後のこと」
35人の作家、35の超短編。
読了するのが本当に辛かった一冊。
特に前半はほとんど作品らしいものはない。
作家さんがどうこうよりも、「十年後のこと」という比較的重そうなお題なのに、与えられるのは見開き数ページ。
これで読みごたえのある作品を産み出すのは大変だったのだろうと。
数頁で痛快なショートショートを量産した星新一の素晴らしさが改めて感じられる。
後半は四、五作ぐらいは面白い作品があったが、傑作がひとつもなかった。
非常に残念。
35作品も集めてもったいない。
正直出版しないほうがいいんじゃ?と思うのだけれど、コンコルドの誤りというか、走り始めたら止められなかったのだろう河出書房出版さん。
意外と壇蜜さんが読めたのが、新しい発見か。
それにしても「十年後のこと」というタイトルでやたら後ろ向きな作品が多くて驚いた。
明るい展望を持てない時代なのだろうか。悩ましい。
同じ十年をキーワードにしたアンソロジーの「十年交差点」のほうが遥かにレベルが高い。
数が多ければいい本になるわけではないのだな、と身をもって教えてくれた点では良書。
たとえ暇を持て余しても手にとらない方がいい。